平成16年改正道路交通法の概要 |
概要 |
最近の交通情勢は、交通事故による死者数は減少しているものの、昨年は高齢者の死者の占める割合が40%をこえ、また、負傷者数及事故発生件数は過去最悪を更新するなど非常に厳しい状況にある。 主な改正事項 |
改正の背景 |
平成15年中の交通事故死者数は7,702人で、昭和32年以来、46年ぶりに7千人台まで減少するに至ったものの、交通事故による負傷者数は過去最悪の118万1,431人を記録するなど、我が国の交通情勢は依然として非常に厳しい状況にある。 政府においては、交通事故による死者数を「10年間で5千人以下にする」ことを目標としているが、これを実現し、我が国を「道路交通に関して世界で一番安全な国」とするためには、交通事故防止対策の一層の推進を図ることが必要である。 一方、最近の社会情勢に目を向けると、刑法犯認知件数が約280万件となるなど、治安情勢がまさに危険水域に至っているのみならず、経済の活性化とともに、生活者・消費者本位の透明性が高く公正な経済社会システムを実現するという観点から、行政の各般の分野について、規制の在り方の見直しが求められている。 |
違法駐車対策の推進 |
(1)改正の趣旨 そこで、今回の改正では、新たに、運転者が反則金を納付しないなど当該放置駐車に係る運転者の責任が追及できない場合には、都道府県公安委員会が放置車両の使用者に対し、違反金(放置違反金)の納付を命ずることができることとする制度(放置違反金制度)を導入することとされた。 |
(2)駐車に係る車両の使用者の義務の強化(第74条の2) これまでも車両の使用者は、車両の運転者に車両の駐車に関し法令の規定を順守させるとともに車両を適正に駐車する場所を確保することその他駐車に関しての車両の適正な使用のために必要な措置を講ずるよう努めなければならないという努力義務が課されている(旧第74条第3項)。 |
(3)車両の使用者に放置違反金の納付を命ずる制度に関する規定の整備 確認標章は、車両の使用者、運転者その他車両の管理について責任がある者以外の者は、取り除いたりしてはいけない。 オ 放置違反の仮納付(第51条の4第9項から第12項まで) |
(4)車検拒否制度に関する規定の整備(第51条の7第2項) |
(5)車両の使用制限命令に関する規定の整備(第75条の2) |
(6)放置車両の確認及び標章の取付けに関する事務等の委託に関する規定の整備 ○ 公正に、かつ登録基準に適合する方法により確認事務を行わなければならない。 ○ 駐車監視員資格者証の交付を受けている者のうちから選任した駐車監視員以外の者に放置車両の確認等を行わせてはならない。 ○ 駐車監視員に制服を着用させ、又はその他の方法によりその者が駐車監視員であることを表示させ、かつ、記章を着用させなければ、その者に放置車両の確認等を行わせてはならない。 放置車両確認機関がこれらの義務に違反した場合は、登録が取り消されることがある。 また、放置車両確認機関の役職員には秘密保持義務が課されており、確認事務に従事する同機関の役職員は罰則の適用に関しては公務員とみなされることとされている。ウ 駐車監視員資格者証(第51条の13) 公安委員会は、放置車両の確認等に関する技能及び知識に関する講習を修了し、かつ、欠格要件に該当しない者等に対し、駐車監視員資格者証を交付することとされた。 駐車監視員は、確認事務の中核となる現場における確認作業を実際に行う者であり、必要な資質、知識等を有する者に限定することによって確認事務が公正かつ適確に行われることを担保する必要がある。このため、必要な資質、知識等を有する者に駐車監視員資格考証を交付することとし、この資格者証を有する者に限って駐車監視員となることができることとされた。 駐車監視員資格者証については、更新制度は設けられていないが、全国で効力を有するとされている。 エ 放置違反金関係事務の委託(第51条の14) |
(7)警察署長が移動保管した車両等の返還に関する規定の整備(第51条及び第72条の2) これにより長期保管車両についでの現場の負担が軽減されるものと見込まれる。 |
運転者対策の推進 |
(1)改正の趣旨
貨物自動車が第一当事者である死亡事故は、他の二輪以上の自動車と比較して、車両保有台数当たり及び走行距離当たりの死亡事故件数が高く、また、近年の様々な事故防止対策にもかかわらず、死亡事故の減少率も低い水準にとどまっている。 また、車両総重量別に車両保有台数当たりの死亡事故件数を見ると、特に車両総重量5トン以上8トン未満(普通自動車のうち大型のもの)及び車両総重量11トン以上(大型自動車のうち大型のもの)のものが顕著に高くなつており、これは、車両の大型化が進んでいるにもかかわらず、運転者の知識・技能がこれに迫い付いていないことが背景になっていると考えられる。 そこで、今回の改正では、貨物自動車に係る運転者の知識・技能の向上を図るため、自動車の種類として新たに中型自動車を設けるとともに、これに対応する運転免許として新たに中型免許、中型第二種免許及び中型仮免許を設けるなど、運転免許制度の改正を行うこととなった。 |
(2)中型免許等の新設(第84条から第87条まで) @ 貨物自動車の車両保有台数当たり及び走行距離当たりの死亡事故件数は他の四輪以上の自動車よりも高く、また、近年の諸対策によ る死亡事故の抑止効果も低い A 車両総重量5卜ン以上8トン未満(大きな普通自動車)及び車両総重量11トン以上(大きな大型自動車)の自動車の保有台数当たりの死 亡事故件数が顕著に高い B Aの自動車による死亡事故は左折事故や追突事故の占める割合が高く、これは貨物自動車が90%以上を占め、大型化しているAの 自動車の運転に必要な技能及び知識の不足が原因と考えられる そこで、今回の改正では、貨物自動車による事故防止を図るため、自動車の種類として中型自動車を新たに設け、これに対応して、中型免許、中型第二種免許及び中型仮免許を新設し、それぞれに見合った欠格事由、受験資格等の制度を整備することとなった。 |
(3)大型免許、中型免許及び中型第ニ種免許の受験資格 |
(4)大型免許、中型免許及び中型第ニ種免許に係る路上試験の導入(第96条の2及び第97条第1項)
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(5)大型免許、中型免許及び中型第ニ種免静を受けようとする者に対する取得時講習の義務付け(第90条の2第1項及び第108条の2第1項) |
(6)改正法の施行の際、現に運転免許を受けている者に係る経過措置(改正法附則第6条から第14条まで) |
暴走族対策の推進 |
(1)共同危険行為等の禁止規定の見直し(第68条) |
(2)騒音運転等に対する罰則規定の見直し(第71条第5号の3及び第120条第1項第9号) |
(3)消音器不備に対する罰則の引上げ(第71条の2及び第120条第1項第9号)
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自動二輪車の二人乗り規制の見直し |
(1)高速自動車国道等における大型自動二輪車等の二人乗りの条件(第71条の4第3項及び第4項) これまでは、高速道路における自動二輪車の二人乗りは禁止されていた。しかし、近年における高速道路の整備状況をみると、自動車交通の利便性を享受する上で高速道路は欠くことができない存在となっている。 こうした中、自動二輪車の利用者等から、二人乗りで長距離ツーリングを行ぅ際に高速道路の利用が認められず一般道路を利用せざるを得ないのは不便であるとして、自動二輪車の利便増進の観点から高速道路の二人乗り禁止規制を見直すべきであるとの要望が寄せられていた。また、規制改革推進三か年計画において「高速自動車国道等における自動二輪車の走行動二輪車の二人乗りを認めることの可否について調査・検討し、結論を得る」こととされた。 |
(2)高速自動車国道等における大型自動二輪車等の二人乗りの条件違反に対する罰則の引き上げ(第71条の4第3項並びに第119条の4第1項第5号) 高速道路では、自動二輪車の走行台キロ当たりの死者数及び死亡事故率が一般道路に比べて高くなっており、ひとたび高速道路において事故が発生すると重大な結果につながるおそれが極めて高い。 また、これまでは高速道路における自動二輪車の二人乗りは全面的に禁止されていたため、高速道路において自動二輪車を二人乗り運転していれば、その者が道路交通法に違反していることば外見上明らかであった。そのため、このことが運転者が違反行為をしないようにする上での心理的な抑止効果として機能していたと考えられるが、今回の改正により20歳以上の者で、大型自動二輪車免許又は普通自動二輪車免許を受けていた期間が三年以上のものであれば高速道路において二人乗り運転をすることができることとなり、違反が外見上は明らかではなくなることから、違反に対する心理的な抑止効果が減少するものと考えられる。 そこで、今回の改正では、罰則の威嚇カ、感銘力を高めるため、高速道路における二人乗り禁止規制に違反した者に対する罰金の額を5万円から10万円に引き上げることとなった。 |
(3)免許を受けていた期間が1年末満の者による大型自動二輪車等の二人乗り禁止規定違反に対する罰則の引上げ(第71条の4第5項及び第6項並びに第119条の4第1項第5号) -年末満の者の占める割合が高くなっている。また、平成15年中に自動二輪車の二人乗り禁止規定違反で検挙した件数は1万2,628件で、違反率が極めて高くなっている。 そこで、今回の改正では、罰則の威嚇カ、感銘力を高めるため、免許取得後一年間の二人乗り禁止規制に違反した者に対する罰金の額を5万円から10万円に引き上げることとされた。 |
(4)危険防止の措置に関する規定の整備(第67条第1項及び第3項) これまで、道路交通法第67条第1項及び第3項の規定により、警察官は、運転者が無免許運転、酒気帯び運転、過労運転等のほか、大型自動車等の無資格運転を行っていると認めるときには、当該車両等を停止させ、免許証の提示を求めるとともに、危険防止のための措置をとることができることとされている。 |
携帯電話等の使用に対する罰則規定の見直し(第71条第5号の5及び第120条第1項第11号) |
自動車又は原動機付自転車の運転中における携帯電話等の使用等についでは、平成10年の道路交通法の改正により、無線通話装置を手で保持して通話のために使用すること及び画像表示用装置に表示された画像を注視することについて禁止規定が設けられた。 また、現行規定で禁止されている行為のうち、無線通話装置を手に持って通話したり、画像表示用装置を手に持ってその装置に表示された画像(メール等が表示された携帯電話の画面等)を注視する行為は、会話に気がとられたり、画像を注視することにより、運転に必要な周囲の状況に対する注意を払うことが困難となることに加え、片手運転となることにより運転操作が不安定となるため、特に危険であると考えられた。 そこで、今回の改正では、これらの行為自体を捉えて、5万円以下の罰金を科すこととされた。また、この違反行為については、交通反則通告制度が適用されることとなる。なお、これまでも禁止の対象ではなかったタクシー無線やハンズフリー装置を使用した携帯電話の使用等については、今回の改正後も罰則の対象とはならない。 |
飲酒検知拒否に対する罰則の引き上げ(第67条第2項及び第119条の2) |
飲酒運転については、飲酒運転による悲惨な事故が後を絶たないことから、平成14年6月に罰則の引上げや行政処分の強化等が行われ、効果をあげているが、他方で、飲酒運転に対する罰則と比べ、相対的に飲酒検知拒否に対する罰則が低くなったことを背景として、飲酒運転の呼気検査を拒否する事例が増えている状況にある。 |
施行期日(改正法附則第1条) |
改正法の施行期日は、各項目により、周知、準備等に必要な時間が異なることから、それぞれ次のとおり。 〇 運転者対策〜公布の日から3年以内で政令で定める日 |