平成19年改正道路交通法の概要   

  第166国会(平成19年)で成立し6月20日公布された「改正道路交通法」の概要は次の通りです。
  

1 悪質・危険運転者対策の推進
   

※ 改正罰則は別表をご覧下さい。 
 (1) 飲酒運転に対する罰則の強化
 飲酒運転の根絶を図るため、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で車両を運転(酒酔い運転)した運転者に対する罰則及び身体に政令で定める程度(現行は呼気1リットル中に0.15ミリグラム)以上にアルコールを保有する状態で車両を運転(酒気帯び運転)した運転者に対する罰則が引き上げられました。
 また、酒酔い運転・酒気帯び運転の罰則引上げに伴い、薬物の影響その他の理由により正常な運転ができないおそれがある状態で車両を運転した場合の罰則についてもそれぞれ同様に引き上げられました。    

(2) 飲酒運転をするおそれのある者に対する車両提供等の禁止
 飲酒運転を根絶するためには、運転者の周辺で飲酒運転を助長することとなるような行為が行われることを防止していく必要がある。そこで、酒気を帯びていて飲酒運転をするおそれのある者に対して車両を提供した者についても、車両の提供を受けた者が飲酒運転をした場合には、飲酒運転をした者と同等の罰則を設けました。
 また、同様に酒気を帯びて車両を運転するおそれのある者に対して酒類を提供して飲酒させた者についても、罰則が設けられました。     

(3) 酒気を帯びた者が運転する車両への同乗の禁止
 あらかじめ運転者が酒気を帯びていることを知りながら、当該運転者が飲酒運転する車両に同乗する行為について、一定の範囲内で罰則を設けました。
 また、当該同乗した者が運転免許を受けた者である場合には、行政処分の対象とすることになりました。

(4) 救護義務違反に対する罰則の強化
 ひき逃げ事件の発生を防止するため、車両の運転者が当該車両の交通による人の死傷があったにもかかわらず、当該死傷者の救護等を怠った場合の罰則を、現行の「5年以下の懲役又は50万円以下の罰金」から「10年以下の懲役又は100万円以下の罰金」に引き上げました。

(5) 欠格期間の延長
 悪質・危険な運転者について長期間車両の運転ができないようにするため、酒酔い運転で死亡事故を起こしたり、救護義務に違反するなどの悪質な違反行為をして運転免許を取り消された場合の欠格期間(運転免許取消後、新たに運転免許を受けることのできない期間)の上限を、現行の「5年」から「10年」に引き上げられました。
     

(6) 飲酒検知拒否罪に対する罰則の強化
 警察官から呼気検査を求められたにもかかわらず、これを拒否した運転者に対する罰則について、現行の「30万円以下の罰金」から「3月以下の懲役又は50万円以下の罰金」に引き上げられました。
○ 警察官から呼気検査を求められたにもかかわらず、これを拒否した場合
    

(7) 免許証提示義務に関する規定の見直し
 警察官は、違反行為等を行った運転者に運転を継続させることができるかどうかを確認するために必要があると認めるときは、運転免許証の提示を求めることができることとし、提示に応じない者について罰則が設けられました。

2 高齢運転者対策等の推進
(1) 記憶力、判断力等の認知機能に関する検査の導入
 高齢運転者に係る交通事故防止を図るため、75歳以上の高齢運転者に対しては、免許の更新の際に、運転に必要な記憶力、判断力等の認知機能に関する検査を行うこととし、その結果に基づいた高齢者講習を行うことによって、高齢運転者の安全運転継続を支援していくことになりました。
 また、当該検査の結果、認知症のおそれがあるという結果が出た者のうち、検査の前一定期間内に一定の違反行為を行っていた者又は検査の後に一定の違反行為を行った者については、専門医による臨時適性検査を受けなければならないことになりました

* 検査の結果、記憶力、判断力等の認知機能に衰えが見られる高齢運転者に対しては、その状況を自覚していただいた上で、高齢者講習においてその状況を踏まえた安全運転の方法について講習を実施し、高齢運転者が安全に自動車等を運転することを支援していくことになりました。

* 運転者について、臨時適性検査の結果、認知症であると医師が診断した場合には、公安委員会はその者の免許の取消し又は効力の停止を行うことになりました。

(2) 高齢者講習受講期間の延長
 免許更新に伴う高齢者講習を円滑に受講できるようにするため、高齢者講習を受講することができる期間について、現行の更新期間満了日前「3月以内」から「6月以内」に延長することになりました。

(3) 高齢運転者標識の表示義務化
 現在、高齢運転者の安全確保等の観点から、70歳以上の高齢運転者については、一定の場合に、高齢運転者標識を表示して運転するように努めなければならないこととされており、高齢運転者標識を表示した自動車に対して、幅寄せや割込みをした運転者は処罰されることとなっているが、特に安全確保等を図る必要の高い75 歳以上の高齢運転者については、高齢運転者標識の表示を義務付ける(表示義務違反について罰則を設ける)ことになりました。

(4) 聴覚障害者の運転免許に関する規定の整備
 現在は運転免許を取得することができない聴覚障害者について、ワイドミラーを装着すること等を条件として普通自動車免許を取得することができることとするとともに、また、このような聴覚障害者が運転する際には、聴覚障害者標識の表示を義務付ける(表示義務違反について罰則を設ける)こととし、聴覚障害者標識を表示した自動車に対して幅寄せや割込みをした運転者は処罰されることになりました。

3 自転車利用者対策の推進
(1) 通行区分の明確化
 現在、自転車は、車道通行が原則とされ、例外的に道路標識等で通行することが認められている場合に歩道を通行することができることとされているが、必ずしもこれによらず、自転車の歩道通行が言わば無秩序になされている状況が見られる。
 そこで、自転車の通行区分について、車道通行の原則を維持しつつ、道路標識等により普通自転車歩道通行可の規制がなされている場合のほか、児童(6歳以上13 歳未満の者・幼児(6歳未満の者)が普通自転車を運転する場合、車道を通行する)ことが危険である場合等と、普通自転車が例外的に歩道を通行することができる場合の要件を法律で明確に定めることになりました。
 一方、歩道通行が認められる場合であっても、歩道における歩行者の安全を確保するため必要があると警察官等が判断した場合には、当該普通自転車の運転者に対して当該歩道を引き続き進行してはならない旨を指示することができることになりました。なおこの指示に違反した場合には、処罰の対象となります。

(2) 児童・幼児のヘルメット着用の促進
 自転車乗車中の事故における被害軽減を図るため、児童・幼児の保護者は、児童・幼児を自転車に乗車させる場合(児童・幼児に自転車を運転させる場合又は幼児を補助いすに同乗させる場合)には、児童・幼児にヘルメットを着用させるように努めなければならないことになりました。

(3) 街頭活動の活性化
地域交通安全活動推進委員の活動内容に、自転車の適正な通行の方法について住民の理解を深めるための運動の推進を加えることとし、自転車に関する街頭活動に積極的に当たっていただくことになりました。

4 被害軽減対策の推進
 現在自動車の運転者は他の者を後部座席に乗車させて自動車を運転するときは、その者に座席ベルトを装着させるように努めなければならないこととされていが事故発生時のシートベルトの被害軽減効果を踏まえ、自動車の運転者は、後部座席についても座席ベルトを装着していない者を乗車させて自動車を運転してはならないことになりました。当面は高速道路において非着用の場合に点数が1点附加される予定です。

5 新たな駐車対策法制の施行状況を踏まえた違法駐車に関する規定等の見直し
(1) 指定車両移動保管機関制度の見直し
 現在、指定車両移動保管機関に行わせることができることとされている違法駐車車両の移動及び保管に関する事務を会社その他の法人に委託することができることとし、指定車両移動保管機関制度を廃止することになりました。
 また、当該事務の受託法人の役職員又は役職員であった者に秘密保持義務を課すことになりました。

(2) 移動保管した違法駐車車両の所有権帰属期間の短縮
 保管した車両(売却代金を含む)を返還することができない場合における当該車両の所有権が都道府県に帰属するまでに要する期間を、所有者に対する告知又は所有者が判明しない場合の公示後、現行の「6月」から「3月」に短縮することになりました。
 また警察署長が保管した車両の所有者が判明しない場合の公示をしたときはその公示の内容等をインターネットの利用その他の方法により公表することになりました。

(3) 報告徴収等の制度の新設
 警察署長は、違法駐車車両の移動及び保管に係る制度の運用のため必要があるときは、保管した車両の使用者等の関係者に対して、必要な報告又は資料の提出を求めることができることになりました。
また、警察署長は、同制度の運用のため必要があるときは、官庁、公共団体等に照会し、又は協力を求めることができることになりました。

(4) パーキング・チケット発給設備に関する規定の見直し
 公安委員会は、時間制限駐車区間においては、パーキング・メーター又はパーキング・チケット発給設備を選択的に設置することができることになりました。

6 安全運転管理者制度の対象の拡大
 現在、250ccを超える自動二輪車を使用して運送事業等を行う貨物軽自動車運送事業者については、安全運転管理者及び運行管理者のいずれの選任義務も課されていないことから、一定の要件に該当する場合、安全運転管理者の選任を義務付けることになりました。

7 施行
 施行期日は別途政令で定められることになるが概ね以下の通り
公布の日から
3月以内の日

* 19.9.19
施行になりました。
飲酒運転等の罰則にかかる規定
パーキング・チケット発給設備に関する規定
外国運転免許制度の適用拡大に係る規定
公布の日から
1年以内の日
自転車利用者対策に係る規定
後部座席シートベルトの着用義務付けに係る規定
高齢運転者標識の表示義務付けに係る規定
視覚障害者標識の表示義務付けに係る規定
レッカー移動関係事務の委託等に係る規定
安全運転管理者制度の対象の拡大に係る規定
公布の日から
2年以内の日
運転免許の欠格期間の延長に係る規定
認知機能検査の導入に係る規定
高齢者講習の受講期間の延長に係る規定




<参考資料>

 ○法改正概要の参考資料 

                    

        

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