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飲酒運転の防止


1 飲んだら乗るな!

「飲んだら乗るな。乗るなら飲むな。」という交通安全標語がある。今更ながらだが、
 ◎ 酒を飲んだら絶対に車を運転しない
 ◎ あらかじめ車を運転する予定があるなら、酒を飲まない
 ◎ 酒飲む場所には車で行かない
 ◎ クルマを運転してきた人、これから運転するおそれのある人には酒類を出さない、勧めない
ということを徹底する必要がある。

 道路交通法では第65条で「何人も飲酒をして車両等を運転してはならない。」とされている。
 このことは、バイクや車を運転するときはもちろん、自転車などの軽車両に乗るときでも、いかなる理由があろうとも飲酒していてはいけないのである。
 飲酒運転は交通事故を発生させる危険性が高く、酒に酔っているときは運転者の意識がなくなる、反射能力等が低下する等により、的確な運転操作ができなくなることも。
 それゆえ飲酒運転の車は走る凶器であるとも言われている。

2 致死率が高い

  飲酒運転による交通事故の特徴をみると、
    他の事故に比べて致死率が高い
状況にある。致死率というのは、交通事故全体に占める死亡事故の割合である。
 死亡事故の4件に1件は飲酒がらみの事故である。

「少しだけなら・・」とか、「一杯だけなら・・」、「事故を起こさなければ・・」、「自分は酒が強いから・・・・」ということで、飲んでしまうようだ。
 中には、「警察に捕まらなければ・・・」、「仮眠するのにクスリだ・・」という長距離トラックの運転手もいるとか・・? 言語道断である。

 少しでも飲酒すると、自動車運転者の運転機能、運転能力などに影響を及ぼすので、運転は絶対に差し控えるべきである。


 飲酒運転の罰則

 道路交通法第65条で飲酒運転を禁止している。
 飲酒運転の態様としては、二つに分けられ罰則が適用される。
@ 「酒酔い運転」
 アルコールの量にかかわらず身体にアルコールを保有する状態、つまり少しでも酒を飲んでいる状態で正常な運転ができないおそれのある場合には「酒酔い運転」となり5年以上の懲役又は100万円以下の罰金に処せられることになる。

A 「酒気帯び運転」
 政令に定める一定の数値以上のアルコールを身体に保有した状態で車両等を運転することである。
 具体的な数字は道路交通法施行令で定められており、それによると、アルコールの血中濃度で1ミリリットル中に0.3ミリグラム、又は呼気1リットル中に0.15ミリグラム以上と規定している。
 酒気帯び運転は、酒酔い運転とは異なり「酔っている」という状態はなくても、呼気検査や血液検査の結果一定のアルコール量を身体に保有していれば、それだけで処罰の対象になる。
 酒気帯び運転の罰則は年以下の懲役又は50万円以下の罰金である。


4 酔いは個人差

 酔いの程度には、
   ほとんど意識がなくまともに立っていられないような「泥酔」
   千鳥足になったり呼吸が速くなったりする「酩酊」
   酔い気分になり理性が失われやすくなる「ほろ酔い」
などがある。個人差はあるが、少しでもお酒を飲むと、身も心も軽く、何となく調子が良くなりテンションが上がってくる。
 飲んでいる本人は、「少し飲んだ方が反射神経がよくなる」とか、「体が軽く機敏になる」などと感じているかも知れないが、実は車の運転を行う際にはそこに問題があるのだ。
 酒が強いとか弱いというのは、体内アルコールの分解力の問題である。「アセトアルデヒド」というアルコールの代謝物質の分解能力によって異なる。
 このアセトアルデヒドが顔を赤くしたり、気分を悪くするなどに作用し、これらの症状が「酔い」の自覚につながってくる。したがってアセトアルデヒドを分解出来ない人は「酔い」を自覚するが、分解能力のある人は「酔い」を自覚し難いといえるのだ。

5 酒が強い、弱いは関係あるのか?

「酔い」というのはいわば感覚的なものであり、体内でのアルコールの含有量(消化率)については、いろいろな実験レポートをみる限り、酒の強い人と弱い人の間に大きな差はないようだ。
 飲酒した場合の身体機能について実験した結果をみると、

   視力が低下する、視野が狭くなる
   集中的にものを見ることができない
   反射能力が低下する、判断力が鈍る

などの障害が生じている。また、
   適度な注意力の配分や集中ができなく、道路上のモノの認知、判断、行動といった一連の運転操作に関する能力が低下
し、結果として酒を飲んだときの運転は、良くものを見ず、よく考えないで走る、運転するということになる。
 そうなると危険な状態での運転であり、車は走る凶器状態になるのだ。

このように、少しお酒の入った状態、いわゆる酒気帯び状態では、一見動作能力が高まったように感じるのだ。
 まだ酔っていない大丈夫だという意識、感覚しかないのだが、実は大変危険な状態に入りつつある。もちろん、外見的にふらついてしているにもかかわらず、「自分は酔っていない。」などと感じている人は、自己の意思コントロール機能を失しており論外である。

飲酒することで、体内のアルコール濃度が高まり、いわば神経機能が少なからず麻痺し、その結果車両の運転等の行為においては危険性が高まることを、車を運転する方は十分認識し、飲酒運転の防止のための、「飲んだら乗らない。乗るなら飲まない。」を徹底することが重要だ。また、運転者以外の者も、アルコールの影響による運転の怖さを十分に認識し、引き続き運転するおそれのある者に対してアルコール類の提供をせず、また飲酒を勧めないと言うことが重要である。
 社会をあげて飲酒運転の防止に努力しよう。


6.飲酒運転幇助行為の禁止

平成19年の道路交通法の改正で次の3つのケースについては新たに罰則が設けられました。なお、次の(1)〜(3)にあてはまらない飲酒運転の教唆、幇助行為については、従来どおり刑法の教唆・幇助罪が適用されて、正犯(運転者)と同じ罰則が適用されることになる。

(1)車両等を提供する行為

 酒気を帯びている者で飲酒運転を行うおそれのある者に対して車両等を提供する行為を禁止しており、車両等の提供を受けた者が酒気帯び運転を行った場合には、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金、酒酔い運転を行った場合には、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金とされている。

(2)酒類を提供する行為

飲酒運転を行うおそれのある者に対して酒類を提供した場合に、酒類の提供を受けた運転者が酒気帯び運転を行ったときには2年以下の懲役又は30万円以下の罰金、酒酔い運転を行った場合には3年以下の懲役又は50万円以下の罰金とされている。
 この対象は飲酒を提供した者なので、酒屋、飲食店のように業務で酒類を提供している者のみならず、たまたま自宅に車で遊びに来たお客に酒類を提供した場合なども含まれ、飲酒運転をするおそれのある者以外の者が対象になるのである。

(3)要求・依頼しての同乗行為の禁止

運転者が酒気を帯びていることを知りながら、自分を同乗させてように要求・依頼して飲酒運転している車両等に同乗する行為を禁止している。 運転者が飲酒運転を行った場合には、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金、運転者が酒酔い状態であることをわかっていながら要求・依頼して同乗し、運転者が酒酔い運転を行った場合には、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金、運転者が酒気帯び運転を行った場合には2年以下の懲役又は30万円以下の罰金とされている。

表   飲酒運転幇助行為に対する罰則


酒気を帯びていて飲酒運転をす
るおそれがある者に対して車両
を提供
飲酒運転を行うおそれのある
者に対し酒類を提供
車両の運転者が酒に酔っている
状態であることを知りながら
車両の運転者が酒気を帯び
ていることを知りながら
自己の運送の要求・依頼をしてその車両に同乗
運転者本人が 酒酔い運転の
場合
 5年以下の懲役または
 100万円以下の罰金
 3年以下の懲役または
 50万円以下の罰金
 3年以下の懲役または
 50万円以下の罰金
 2年以下の懲役または
 30万円以下の罰金
酒気帯び運転
の場合
 3年以下の懲役または
 50万円以下の罰金  
 2年以下の懲役または
 30万円以下の罰金
 2年以下の懲役または
 30万円以下の罰金
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※ 教唆犯の場合の罰則は、運転者本人に同じです。


7.その他最近の動向 

(1) 公務員の飲酒運転は懲戒免職?

 飲酒運転が大きな社会問題としてマスコミ等が取り上げる中、各自治体等では、特に公務員の飲酒運転に関して厳しく処罰することを検討したりしている。また、多くの都道府県では、職員から誓約書を求めたり、飲食店主等に対する協力の呼びかけ、講習会の開催等の飲酒運転防止の啓蒙活動を行ったりしている。
 
 例;
 ○ 「絶対に飲酒運転しない」茨城県、職員に誓約書求める。
 飲酒運転に歯止めをかけようと、茨城県が全職員約6000人に、「絶対に飲酒運転をしない」と約束させる誓約書の提出を求めている。

 ○ 飲酒運転で県職員は原則免職/岩手
 知事は「酒気帯びも酒酔いも)どちらも重大な違反なので、あまり差をつける必要はない。一番重い懲戒処分でいいのではないか」と述べ、県職員の飲酒運転は原則免職とする方針を示した。
   その他多くの自治体で従来の内部基準等を検討しているという。

そういう中で、

   飲酒運転で懲戒免職の教諭が「重すぎる」と不服申し立てというニュースもある。
 飲酒運転で今年1月に懲戒免職となった横浜市立中の元男性教諭が「免職処分は重すぎる。 裁量権の乱用だ」と市人事委員会に不服申し立てをしていたことが分かった。同市では飲酒運転による懲戒免職処分の不服申し立ては初めて。元教諭は昨年12月、検問で違反切符を切られ、罰金20万円の略式命令を受けた。(毎日新聞より)


(2) 一緒に飲んでいた同僚の男に「飲酒運転の幇助」にあたるとして損害賠償を命じる(東京地裁)

 飲酒運転をめぐって新たな司法判断である。
飲酒運転の車にはねられ死亡した女子大学生の遺族が、加害者だけでなく一緒に酒を飲んでいた同僚らにも損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は加害者と同僚、車所有者の元勤務先に合計5800万円の支払いを命じた。

ひき逃げ死亡事故を起こした加害者の男(37)だけでなく、酒場で一緒に飲んだ同僚の男性(33)にも、「飲酒運転のほう助に当たる」として損害賠償を命じる判決が言い渡されたのである。 同乗者の責任を認定した例は過去にもあるが、一緒に酒を飲んだ人にも賠償を命じる判決は極めて異例といえよう。

 判決では「長時間一緒に飲酒したのは酒を勧めたと同視でき、飲酒運転をほう助した」「帰り際の様子などから加害者が運転して帰宅することが予見できたのに、制止すべき注意義務を怠った」と指摘し、同僚の行動を厳しく批判した。

 車を「走る凶器」化させた運転者本人が重大な責任を負うのは当然だが、判決は「飲酒を勧めた者はその後の運転を止める義務がある」との道交法の規定を踏まえ、周囲にも重い責任を問い掛けたといえよう。

 飲酒運転が引き起こす結果の重大さは、あらためて言うまでもない。
 今回の判決は、運転者にとどまらず、周りの者にも制止義務があることをはっきりと示した。踏み込んだ司法判断を、悲惨な事故防止への警鐘と受け止めたい。