夜 間 事 故 の 傾 向 と 特 徴

                       〜 飲酒と夜間の駐車車両事故

 一般的に夜間の事故は重大事故につながるといわれているが、夜間の時間帯が長くなる季節を前に、その特徴と重大事故の誘因である駐車車両や飲酒の事故についてその実態を探ってみることとした。

1 夜間事故の推移と特徴
(1)夜間事故の推移 
 ア 全事故(死傷事故)
 平成13年の交通事故の発生件数は、前年対比で15,235件(1.6%)増加したが、夜間事故は170件(0.06%)減少した。また、全事故に占める夜間事故の構成率は30.1%と前年対比で0.6%減少したがほぼ横ばいで推移している(表1)。
 イ 死亡事故
 平成13年の死亡事故件数は、戦後最も交通事故死者数の少なかった昭和54年以来最少であった。また、夜間事故の構成率は53.7%であり、近年はほぼ55%前後で推移している。

(2)夜間事故の特徴
 ア 死亡事故率は夜間が高い  
 平成13年の夜間の死亡事故率は1.58%であり、死亡事故件数の減少に伴い昭和54年以来最も低い値となった。しかし、昼間における死亡事故率と比較すると、約3倍高くなっている。
 イ 歩行中の死傷者数の構成が高い
 昼夜別・状態別死者数を構成率でみると、歩行中が昼間に比較して夜間が高くなっている。また、死亡事故を第一当事者の当事者別・昼夜別にみると、自家用乗用車、事業用乗用車、自動二輪車、歩行者の夜間事故の割合が過半数を占めている。 
 ウ 年齢層別では若者が多い
 全事故を第一当事者の年齢層別にみると、2024歳の構成率は昼間が12.8%であるのに対して夜間は18.9%、1619歳は昼間が5.1%であるのに対して夜間は8.1%となっており、1624歳の若者層の構成率が高い。
 エ 初心運転者は夜間の構成率が高い
 運転免許取得後1年未満の初心運転者の事故を昼夜別にみると夜間事故の構成率は、全事故では40.3%、死亡事故では63.9%であり、いずれも全運転者と比較して高くなっている。
 オ 信号交差点内の事故が多い
 全事故を道路形状別にみると、夜間は昼間に比較して信号交差点内での事故の構成率が高く(夜間23.8%、昼間16.4%)、無信号交差点内での事故の構成率が低く(夜間22.0%、昼間32.8%)なっている。
 カ 高速自動車国道、指定自動車専用道路の死亡事故は約6割が夜間に発生
 高速自動車国道及び指定自動車専用道路における全事故及び死亡事故のいずれも、一般道路に比べて夜間の構成率が高く、特に高速自動車国道の全事故では36.5%、死亡事故では60.2%となっている。
 キ 死亡事故の危険認知速度別では夜間の81km/h以上が減少 
 危険認知速度別死亡事故件数を指標でみると図2とおりであり、特に夜間の81km/h以上が大きく減少しており、高速度による死亡事故件数の減少傾向が続いている。

2 夜間における駐車車両への衝突事故等
 昼夜間を比較して夜間の死亡事故率が比較的高い事故類型としては、駐車車両への衝突事故がある。
(1)駐車車両への衝突事故の特徴
 ア 発生件数等の推移
 駐車車両への衝突事故件数の推移については、若干の増減はあるものの昭和54年と比較して大幅に増加している。
 イ 昼夜別
 駐車車両に衝突する事故を昼夜別にみると、夜間が概ね6割を占めている。また、平成13年中の駐車車両に衝突した事故を昼夜別にみると、死亡事故件数は夜間が76件、昼間が28件で夜間が昼間の2.7倍、重傷事故件数は夜間が368件、昼間が186件で夜間が昼間の2倍となっている。これは昼間に比べて夜間の方が暗く、駐車車両に対する視認性が悪いことなどが影響しているものと考えられる。
 ウ 当事者別
 平成13年における各当事者別の単独事故に占める駐車車両衝突事故の割合は、自動車5.9%、二輪車・原付5.2%、自転車2.5%となっており、ほぼ横ばいで推移している。

(2)駐車車両側の責任
 以上のように夜間の駐車車両への衝突事故の場合には死亡事故率が高く、駐車車両側の責任については昼間よりも厳しく問われる傾向にある。
 特に、過失割合(過失相殺率)は、駐車した道路の明暗や駐車灯の点灯の有無など駐車車両の視認性の程度によって差異があるようである。また、駐車車両の運転者のみならず運行供用者(いわゆる使用者など)等の責任を問われ損害賠償を命じられている例もある。
 なお、刑事責任としては、単に駐車違反としての処分だけではなく、業務上過失致死傷罪(刑法第211条)が適用されている例もあり、安易な駐車が重大事故を招き、結果としてその責任を負うことになる。

3 飲酒事故の特徴
(1)飲酒運転事故の傾向
 飲酒運転による事故の推移をみると、図4のように酒酔い運転は減少傾向にあるものの、「酒気帯び」及び「基準以下」は増加傾向にあり、特に平成11年から12年にかけての増加が大きい。なお、「酒気帯び」は、平成13年は減少に転じ、平成14年上半期も前年に比較して減少しているが、「基準以下」は相変わらず増加傾向にある。
 「酒気帯び」が平成13年及び平成14年上半期に減少したのは、平成13年に飲酒運転に対する罰則の強化、基礎点数の引き上げなどを内容とする道路交通法の一部改正が行われたほか、刑法の一部改正による危険運転致死傷罪の創設、酒気帯び運転の基準の引き上げなどが順次行われたことから、これら法改正等に伴う広報啓発活動や飲酒運に対する厳しい世論などにより、飲酒運転排除の機運が高まったものと考えられる。
 特に、改正道路交通法が施行された今年6月中の飲酒運転による事故死者数は、対前年同期比で40人減少し、その結果今年上半期の死者数が対前年同期比66人減となるなど、改正道路交通法の施行が大きく寄与しているものと推定される。

(2)昼夜別飲酒運転の特徴
ア 夜間事故の4件に1件は飲酒
 飲酒運転による事故は、夜間に多く発生しており、飲酒運転事故を昼夜別にみると夜間の割合が全事故では77.5%、死亡事故では84.6%を占めている。また、夜間の死亡事故に占める第一当事者が「飲酒あり」は24.4%であり、夜間における死亡事故の4件に1件は飲酒絡みの事故である。
イ 年齢層別
 運転免許保有者10万人あたりの飲酒運転(酒気帯び)事故件数を年齢層別にみると、2024歳が最も多く、ついで2529歳、19歳以下となっており、若者層の酒気帯び運転事故が多い。また、いずれの年齢層でも、平成12年から13年にかけて減少している。
ウ 死亡事故率が高い
 原付以上(第一当事者)の飲酒有無別の死亡事故率をみると、夜間の「飲酒あり」は5.1%、「飲酒なし」は1.2%であり、夜間の「飲酒あり」は「飲酒なし」の交通事故に比べて死亡事故になる危険性が約4倍高い。また、「飲酒あり」全体では死亡事故率が4.7%、「飲酒なし」全体では0.7%であり、昼夜間を問わず死亡事故になる危険性が約7倍高い。

終わりに
 以上のように、夜間事故の場合、死亡事故率が高く、かつ飲酒絡みの事故が多い状況にある。
 自動車運転者は飲酒運転の防止に努めることはもちろん、基本的な交通ルール、マナーを遵守し、特に薄暮時や夜間は視認性が悪くなることから、運転に当たっては細心の注意を払う必要がある。
 また、自転車、歩行者などは、反射材用品を活用して自分の存在を目立たせる工夫をするなど、道路利用者がそれぞれの立場からお互いを思いながら共存していくことが大切である。

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